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腎臓病の犬に梨は「絶対NG」ではないが、与えるなら慎重にごく少量だけ
「梨はみずみずしくて甘いし、水分補給にもなりそう」
そんな理由から、愛犬に梨をあげたくなる飼い主さんは多いかもしれません。
しかし、腎臓病を抱える犬にとっては注意が必要な果物です。
梨そのものが毒ではありませんが、腎臓に負担をかける成分を含んでいるため、与えるタイミングや量を誤ると体調を悪化させるリスクがあります。
結論としては:
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健康な犬:少量ならOK
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腎臓病の犬:基本は控える or ごく少量だけ
この「少しならOK」「控えたほうがよい」の線引きを正しく理解することが、愛犬の体を守るポイントです。
梨が犬にとって危険ではない理由(一般的な栄養価)
梨は人間にとっても体に優しい果物であり、犬にとっても一部の成分はメリットになります。
梨の主な栄養成分
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水分:約88〜90%
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食物繊維(整腸効果)
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ビタミンC(抗酸化作用)
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カリウム(老廃物排出のサポート)
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ソルビトール(便通改善)
そのため、暑い季節の水分補給や軽いおやつ代わりとしては適しています。
また、梨には脂肪・タンパク質がほぼ含まれていないため、肥満や膵炎を気にする犬にも低カロリーな選択肢となります。
しかし、ここで注意が必要なのが「腎臓病の犬」にとっての栄養の意味です。
腎臓病の犬に梨を与えるときのリスク
健康な犬にとって良い成分でも、腎臓病の犬にとっては負担となることがあります。
以下の3つのリスクをしっかり理解しておきましょう。
① カリウムの摂りすぎに注意
梨にはカリウムが比較的多く含まれています。
健康な腎臓なら余分なカリウムを尿として排出できますが、腎臓病ではこの機能が低下しています。
その結果、高カリウム血症という危険な状態に陥る可能性があります。
【高カリウム血症の症状】
筋肉のけいれんや震え
不整脈
倦怠感、意識の低下
最悪の場合、心停止のリスク
梨100gあたりのカリウム量は約120mg。
少量でも積み重なれば影響するため、日常的に与えるのはNGです。
② 利尿作用による脱水リスク
梨には自然な利尿作用があります。
これが健康な犬には老廃物の排出を助ける働きをしますが、腎臓病の犬の場合は逆効果になることがあります。
腎臓がすでに弱っている状態では、過剰な利尿作用により
→ 水分やミネラルがさらに失われ、
→ 脱水や電解質バランスの乱れを招く恐れがあります。
✅特に注意すべきサイン
鼻や口の乾き
皮膚をつまんでもすぐ戻らない
目がくぼむ
元気がなく寝てばかり
梨を「水分補給になる」と安易に与えるのは危険です。
③ 果糖が腎臓の代謝負担になることも
梨は甘みの主成分として**果糖(フルクトース)**を多く含みます。
果糖は血糖値を上げにくい一方で、代謝の過程で腎臓・肝臓に負担をかけることが知られています。
腎臓病の犬は老廃物の処理能力が落ちているため、
果糖を分解しきれず体内に蓄積してしまうリスクがあります。
腎臓病の犬に梨を与える場合の注意点
どうしても梨をあげたい場合は、以下のポイントを必ず守りましょう。
① ごく少量からスタート(目安:1〜2cm角程度)
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小型犬:1cm角を1個程度
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中型犬:2〜3個まで
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大型犬:3〜5個程度
※あくまで**「おやつの一口」**程度。毎日は避けましょう。
② 種・芯・皮は完全に取り除く
梨の種と芯には微量のシアン化合物が含まれています。
ごく微量ですが、腎臓の弱った犬には刺激になります。
また、皮は消化に悪く、繊維が強すぎて腸に負担をかけることもあります。
必ず皮・種・芯を除き、柔らかい実だけを与えましょう。
③ 与えるタイミングは「体調が安定している日だけ」
腎臓病の犬は、日によって食欲や体調が変わります。
「嘔吐がない日」「よく食べられている日」など、体調が比較的落ち着いているときに少量だけ与えるようにします。
④ ドライフードとの併用に注意
梨は水分量が多いため、ドライフードと一緒に与えると胃腸が緩くなることがあります。
食後にデザートとして与えるか、時間をずらして少しだけ与えるのがおすすめです。
梨を避けたほうがいいケース
以下のような犬には、梨を与えるのは控えましょう👇
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腎臓病の中期〜末期ステージ
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高カリウム血症を指摘された犬
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尿がほとんど出ていない犬
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食欲不振・嘔吐がある犬
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心臓病や糖尿病を併発している場合
これらの犬に梨を与えると、電解質異常や尿毒症悪化のリスクがあります。
獣医師と相談してから判断しましょう。
梨以外でおすすめの代替フルーツ
どうしても果物を与えたい場合は、以下のような低カリウム・低糖分の代替フルーツがおすすめです👇
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りんご(皮と種を除去):食物繊維が豊富で腸にやさしい
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ブルーベリー:抗酸化作用があり、目や免疫にも良い
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スイカ:夏場の水分補給に最適(少量)
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メロン(ごく少量):胃腸の働きを助けるが糖分注意
ただし、どれも「療法食がきちんと食べられている前提」でご褒美程度に。
腎臓病の犬に梨をあげるときの結論
| 判断ポイント | 内容 |
|---|---|
| 与えていいか? | ごく少量・健康状態が安定しているときのみOK |
| 与えすぎると? | 脱水・高カリウム血症・嘔吐・下痢のリスク |
| 安全な与え方 | 皮・種・芯を除き、小さく切って1〜2個程度 |
| 与えないほうがいい場合 | 中〜末期、尿量異常、食欲不振、嘔吐あり |
| 代替案 | りんご・ブルーベリー・スイカ(少量) |
飼い主の方へ
梨は一見ヘルシーで水分たっぷりの果物ですが、
腎臓病の犬にとっては「やさしさが裏目に出る食材」になることもあります。
「少しくらいなら大丈夫」と思う前に、
愛犬の体の状態を確認し、迷ったときは必ず獣医師へ相談してください。
腎臓病の食事管理は、“我慢ではなく、正しい選択”が大切です。
安全に、そして穏やかに暮らせる日々のために、
今日からできる「ひと口の見直し」から始めましょう。


