当サイトは犬の「腎臓病」主に「腎不全」にテーマを絞り、腎臓病・腎不全の治療や対策について考えていくサイトです。腎臓病対策には何があるのか、果たして治療はどこまで有効なのか。真剣に考えて行きたいと思っています。
犬の腎臓病のためにできること

腎臓病末期に飼い主が知っておくべき身体の変化と、穏やかに過ごすためのケア

犬の腎臓病が末期(ステージ4)に近づくと、体にさまざまな変化が現れ始めます。
それは腎臓が担っている 老廃物の排出・電解質バランス・ホルモン調整・水分管理 などが十分に行えなくなることで起こるものです。

末期の変化はとてもつらく、飼い主さんにとっては「何が起きているの?」「まだできることはあるの?」という強い不安に包まれる時期でもあります。

しかし、末期の身体の変化を事前に知っておくことで、愛犬の苦痛を減らし、穏やかな時間を過ごさせてあげることができます。

この記事では、腎臓病末期に見られる身体の変化と、その時期に飼い主がしてあげられるケアを、できるだけ丁寧にわかりやすくまとめます。


■ 腎臓病末期に起きる身体の変化とは?

腎臓病が末期に入ると、腎臓がほとんど機能しなくなり、体中にさまざまな影響が現れます。ここでは、飼い主が必ず知っておくべき大きな変化を説明します。


① 尿毒症が進み、食欲がほとんどなくなる

腎臓が老廃物を排出できなくなると、血液に毒素(尿素・アンモニア・クレアチニン)が溜まる「尿毒症」が進行します。

■ 見られやすい症状

  • 食べ物の匂いを嫌がる

  • 好物でさえ口をつけない

  • 歯茎が白っぽい

  • 口臭がアンモニア臭のようになる

  • よだれが増える

  • 吐き気・嘔吐を繰り返す

食べない=弱っている証拠ではありますが、
腎臓病末期では“無理に食べさせない”という選択が必要なこともあります。


② 脱水が進みやすい(飲む量が激減する)

腎臓病の犬は、末期になると飲む量が少なくなり、脱水が急速に進みます。

脱水のサイン

  • 皮膚の戻りが遅い

  • 目が落ちくぼむ

  • 口の中が乾燥している

  • 元気がなく動きたがらない

脱水はさらに尿毒症を悪化させるため、点滴や水分補給が重要になります。


③ 筋力低下・ふらつき・立てなくなる

腎臓病末期では筋肉量が大きく減少し、
・歩くのが遅くなる
・階段を嫌がる
・立ち上がれない
・すぐ横になる
といった“体の衰え”が顕著になります。

同時に、貧血(ヘマトクリット値低下)も進むため、酸素不足でさらに体力が落ちます。


④ 体温調節が難しくなる(冷え・低体温)

末期になると体温を維持する力が弱くなり、
■ 冷たい床で震える
■ 耳や手足が冷たい
■ 体温が下がり気味

という状態になります。

冷えは苦痛を増やすため、温度管理が非常に重要です。


⑤ 呼吸が浅く早くなる

尿毒症が進むと、

  • 代謝性アシドーシス

  • 貧血
    などが原因で呼吸が速くなります。

呼吸がしんどいと眠ることも難しくなるため、観察が必要です。


⑥ 眠っている時間が増え、反応が鈍くなる

これは腎臓病末期の自然な流れです。

  • ぼんやりする時間が多い

  • 名前を呼んでも反応が弱い

  • 深く眠る

  • 起きている時間が短い

これは苦しんでいるわけではなく、体が休もうとしている状態です。


⑦ けいれんや意識混濁が起きることがある

末期の尿毒症では、
・けいれん
・視線が定まらない
・ぐったりする
といった神経症状が出ることがあります。

決して飼い主の責任ではありません。
腎臓が限界を迎えているサインです。


■ 末期の犬と過ごすために、飼い主ができるケア

腎臓病末期は“治す段階”ではなく、
少しでも苦痛を軽くし、穏やかに過ごしてもらうケアが中心になります。


① 水分ケアを最優先にする

末期の犬はほとんど飲みたがりません。
しかし、脱水は苦しさを増やすため、可能な範囲で水分補給を行います。

● スープ(塩分なし)にする
● シリンジで少量ずつ与える
● 氷片(少量)を舐めさせる
● 点滴(皮下輸液)は獣医師と相談して量を調整

ただし 嫌がる場合は無理をしない ことも大切。


② 食べられないときは“無理をさせない”選択が必要

末期は「食べられない状態」が自然です。

無理に食べさせると、吐き気が増し苦痛につながることがあります。

● 少量だけ舐める
● 好きなものだけ与える
● 流動食を少量だけ

食べないことに罪悪感を抱く必要はありません。


③ 温度管理で“苦痛を減らす”

冷えは苦しさを増すため、体を温かく保つケアはとても効果があります。

● ブランケット
● ペット用ヒーター(低温)
● 湯たんぽ(必ずタオルで包む)
● エアコンで室温を23〜26℃に

ただし、脱水があると熱中症のリスクもあるため注意


④ 吐き気・口内の不快感を減らす工夫

口臭やよだれが強く、口内が荒れやすくなります。

● こまめに口周りを優しく拭く
● スポンジで軽く口の中をぬぐう(嫌がらない範囲で)
● 吐いた後はすぐ清潔に

清潔な口周りは犬がとても楽になります。


⑤ 静かな環境で、触れ合う時間を大切にする

末期の犬は強い刺激を嫌がります。

● 部屋を暗めにする
● 大きな音を避ける
● 触る回数を減らし、優しく包むように

そして何より大切なのは
“そこにいてあげること”
です。

飼い主の気配は、犬にとって最大の安心になります。


⑥ 排泄のサポート

筋力低下が進むと排泄が難しくなります。

● トイレまで抱えて連れていく
● ペットシーツを近くに置く
● 寝たまま排泄した場合はすぐに清潔に

皮膚トラブルを防ぐためのケアはとても重要です。


⑦ 苦痛緩和ケア(緩和医療)を獣医師と相談

治療ではなく、
苦痛を減らすための医療(緩和ケア) が末期では中心になります。

  • 点滴量の見直し

  • 吐き気止め

  • 痛み止め

  • 皮膚炎のケア

獣医師と一緒に
「今できる一番優しいケア」
を選びましょう。


■ 最期の時間に近づいたとき、見られる身体の変化

犬が最期を迎える数日前〜数時間前に見られるサインがあります。

● 水を全く飲まなくなる
● 呼吸がゆっくり、浅くなる
● 反応がほとんどなくなる
● 眠るように意識が薄れる

これらは 苦しんでいるのではなく、自然な“体の機能の停止”の過程 です。

そばにいてあげるだけで十分です。


■ まとめ|“治す”より“守るケア”へ

腎臓病末期は、
犬にとっても飼い主にとっても、とても大切な時間です。


✔ 尿毒症・脱水・食欲低下などの症状が進行

✔ 苦痛のサインを理解し、できる限り緩和する

✔ 無理な治療ではなく、穏やかに過ごすことが最優先

✔ 何より大切なのは「そばにいてあげること」


愛犬にとって、
あなたの存在そのものが何よりの安心 です。

最後まで穏やかに、苦しみを最小限にしてあげられるよう、
その子のペースを大切にして過ごしてください。