犬の腎臓病は腎機能の低下だけでなく、さまざまな合併症を引き起こします。その中でも「貧血」は多くの犬に見られる症状の一つであり、体力や生活の質を大きく損なう原因となります。腎臓病による貧血は「腎性貧血」と呼ばれ、適切な治療を行わないと病気の進行や全身状態の悪化を加速させる恐れがあります。ここでは、犬の腎臓病と貧血の関係、原因、治療法について詳しく解説します。
Contents
腎臓病と貧血の関係
腎臓は血液をろ過する臓器であると同時に、「エリスロポエチン(EPO)」というホルモンを分泌しています。このホルモンは骨髄に働きかけ、赤血球の生成を促す役割を持ちます。
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腎臓病が進行するとEPOの分泌が減少
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赤血球が十分に作られなくなる
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結果として「腎性貧血」を引き起こす
さらに、腎臓病では尿毒症によって赤血球の寿命が短くなり、慢性的な貧血が悪化することもあります。
腎性貧血の症状
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元気消失、疲れやすくなる
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運動を嫌がる
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食欲低下
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体重減少
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粘膜(歯茎や舌)の蒼白
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重度になると呼吸困難や頻脈が見られる
これらの症状は腎臓病の進行と重なり、気づかれにくいことが多いため注意が必要です。
腎臓病による貧血の原因
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エリスロポエチン不足
腎臓機能の低下によりホルモンが十分に分泌されず、赤血球が作れなくなる。 -
赤血球の寿命短縮
体内に溜まった老廃物(尿毒素)が赤血球を傷つける。 -
栄養不足
食欲不振により鉄分・ビタミンB群・タンパク質が不足。 -
慢性的な出血
胃腸障害や潰瘍による少量の出血が慢性的に続く場合もある。
腎性貧血の治療法
エリスロポエチン製剤(EPO製剤)
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人工的にEPOを補充することで赤血球の生成を促す
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重度の腎性貧血に使用される
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効果は高いが、抗体産生による副作用に注意が必要
鉄剤の投与
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鉄分不足による貧血を改善
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経口サプリメントや注射で補給する
ビタミン剤
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ビタミンB12や葉酸の補給で赤血球の生成をサポート
輸血
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急激な貧血や重度の状態で一時的に行われる救急的処置
栄養管理
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療法食やサプリメントで鉄分・ビタミン・必須アミノ酸を補う
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食欲がない場合はウェット食や嗜好性の高いフードを工夫
飼い主がよく抱く質問
腎臓病の貧血は治りますか?
腎臓病が原因のため根本的な完治は難しいですが、EPO製剤や鉄剤などで改善・コントロールが可能です。
自宅でできることはありますか?
食事管理とサプリメントによる栄養補給が有効です。ただし、サプリメントは必ず獣医師の指導に従って与えることが大切です。
貧血が進むとどのようなリスクがありますか?
酸素不足により全身が疲弊し、心臓や脳にも負担をかけます。放置すれば命に関わる危険性があります。
まとめ
犬の腎臓病は「腎性貧血」という合併症を引き起こし、体力低下や生活の質の低下につながります。
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腎臓病によりエリスロポエチンが不足 → 赤血球が作れなくなる
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貧血の症状:元気消失、食欲低下、体重減少、粘膜蒼白
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治療はEPO製剤、鉄剤、ビタミン補給、輸血など
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栄養管理やサプリメントで体のサポートを行うことも重要
早期に症状を見抜き、獣医師と連携して治療を行うことで、愛犬の健康寿命を大きく延ばすことができます。