犬の腎臓病は進行性の病気であり、慢性腎臓病(CKD)が進むと末期症状へと移行します。末期の段階では腎機能の大部分が失われ、体内に老廃物や毒素が蓄積する「尿毒症」に至ることが多く、命に関わる状態になります。この段階では延命よりも「緩和ケア」に重点を置き、苦痛をできる限り軽減しながら愛犬と穏やかな時間を過ごすことが大切です。
Contents
犬の腎臓病の末期症状
食欲の消失
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全くフードを食べなくなる
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好物やおやつにも反応しない
頻繁な嘔吐・下痢
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老廃物が体内に溜まり、消化器に強い影響を及ぼす
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脱水がさらに進む
尿量の変化
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尿がほとんど出ない(乏尿・無尿)
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毒素が体に蓄積して尿毒症に至る
極度の体重減少・衰弱
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骨が浮き出るほど痩せる
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筋肉量の減少が顕著
神経症状
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けいれん
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意識障害
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歩行困難やふらつき
その他の症状
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アンモニア臭の強い口臭
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被毛のパサつき、毛並みの悪化
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無気力で動けなくなる
緩和ケアの目的
腎臓病末期では完治は望めないため、苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を維持することが最も重要です。
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痛みや不快感を軽減する
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食欲を少しでも維持する
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水分を補給して脱水を防ぐ
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安心感を与え、穏やかな環境を整える
緩和ケアの方法
食事面での工夫
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少量でも食べられる好物を与える
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ウェットフードや流動食を利用する
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食欲増進剤や制吐剤の投与で食べやすくする
水分補給
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自宅での皮下点滴による輸液
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ウェットフードやスープで水分摂取を促す
薬物療法
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制吐剤:吐き気や嘔吐を軽減
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鎮痛薬:痛みや不快感を和らげる
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胃薬・胃粘膜保護剤:消化器症状を改善
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降圧薬:高血圧をコントロール
サプリメントの活用
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オメガ3脂肪酸やビタミンB群で体のサポート
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プロバイオティクスで腸内環境を整える
環境の整備
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静かで安心できる場所を用意
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柔らかいベッドで体を休ませる
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トイレは近くに置き、移動の負担を減らす
飼い主ができるサポート
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毎日の体調を観察し、変化を記録する
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苦しそうな症状が出たらすぐに獣医師へ相談する
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無理に食べさせたりせず、愛犬のペースを尊重する
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穏やかに声をかけ、安心感を与える
飼い主がよく抱く質問
末期になっても延命治療は可能ですか?
可能ですが、犬にとって大きな負担になることもあります。延命よりも緩和ケアを優先する選択肢もあります。
どのくらい生きられますか?
症状や体調によって異なります。数週間〜数ヶ月単位での経過が一般的ですが、緩和ケアによって穏やかな時間を少しでも長く持てる可能性があります。
自宅で看取ることはできますか?
可能です。獣医師と相談し、必要な点滴や薬を準備すれば、自宅で最期まで寄り添うことも選択肢の一つです。
まとめ
犬の腎臓病の末期は、食欲消失や嘔吐・下痢、乏尿・無尿、極度の体重減少、神経症状など深刻な状態が見られます。この段階では「延命治療」よりも「緩和ケア」が重要であり、苦痛を和らげて穏やかな時間を過ごすことが治療の中心になります。
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食事や水分補給を工夫し、少しでも快適に過ごせるようにする
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薬物療法で吐き気・痛み・高血圧をコントロールする
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安心できる環境を整え、愛犬の心の安らぎを守る
飼い主が最後まで寄り添い、愛情を注ぎ続けることが、最も大切なケアとなります。