当サイトは犬の「腎臓病」主に「腎不全」にテーマを絞り、腎臓病・腎不全の治療や対策について考えていくサイトです。腎臓病対策には何があるのか、果たして治療はどこまで有効なのか。真剣に考えて行きたいと思っています。
犬の腎臓病の治療法

犬の腎臓病の治療法(薬物療法)

犬の腎臓病は進行性の病気であり、完治は難しいとされています。そのため治療の目的は「進行を遅らせ、症状を軽減し、生活の質を維持すること」です。薬物療法は腎臓病そのものを治すものではありませんが、合併症や症状をコントロールするうえで欠かせない治療法です。ここでは犬の腎臓病に用いられる主な薬物療法の種類と役割について詳しく解説します。


腎臓病における薬物療法の目的

腎臓病の薬物療法は大きく分けて以下の目的で行われます。

  • 高血圧の改善

  • リンや老廃物のコントロール

  • 嘔吐や食欲不振など症状の緩和

  • 腎性貧血の改善

  • 合併症の予防

症状や進行度に応じて複数の薬を組み合わせるのが一般的です。


高血圧に対する薬物療法

腎臓病と高血圧は密接に関係しており、血圧が高いと腎臓へのダメージがさらに進みます。

  • ACE阻害薬(エナラプリル、ベナゼプリルなど)
    血圧を下げると同時に腎臓の糸球体を保護する作用があります。

  • ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
    ACE阻害薬が合わない場合に使われることがあります。


リンコントロールに用いる薬

腎臓病ではリンが体に蓄積しやすく、高リン血症は病気の進行を加速させます。

  • リン吸着剤
    フードに混ぜて与え、食事中のリンが吸収されるのを防ぎます。代表的な成分には炭酸カルシウムやセベラマーがあります。


嘔吐・食欲不振に対する薬

腎臓病の進行により体内に毒素が溜まると、嘔吐や吐き気、食欲不振が見られるようになります。

  • 制吐剤(メトクロプラミド、マロピタントなど)
    吐き気を抑え、食欲の維持を助けます。

  • 胃酸分泌抑制薬(オメプラゾールなど)
    胃粘膜を保護し、胃炎や胃潰瘍のリスクを軽減します。


腎性貧血に対する薬

腎臓がダメージを受けると、赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)が不足し、貧血を起こすことがあります。

  • エリスロポエチン製剤(EPO製剤)
    人工的に赤血球の生成を促す薬で、重度の腎性貧血に使用されます。

  • 鉄剤やビタミン剤
    貧血改善を補助する目的で使われることがあります。


電解質異常のコントロール

腎臓病ではカリウムやナトリウムのバランスが崩れることがあります。

  • 高カリウム血症にはカリウム吸着薬

  • 低カリウム血症にはカリウム補給薬

適切なバランスを保つことは命に直結するため、血液検査の結果に基づいて調整されます。


飼い主がよく抱く質問

薬だけで腎臓病は治りますか?

薬物療法はあくまで進行を抑え、症状を緩和するものです。完治はできませんが、適切に用いることで愛犬の生活の質を大きく改善できます。

一度始めた薬は一生続けるのですか?

多くの場合、腎臓病が進行性であるため長期的に使用します。ただし薬の種類や量は病気の進行や症状によって調整されます。

副作用はありますか?

薬によっては副作用の可能性があります。定期的な血液検査や尿検査を行いながら、安全に投与することが大切です。


まとめ

犬の腎臓病における薬物療法は、症状を和らげ、進行を遅らせるために不可欠な治療です。

  • 高血圧にはACE阻害薬やARB

  • 高リン血症にはリン吸着剤

  • 嘔吐や食欲不振には制吐剤や胃薬

  • 腎性貧血にはEPO製剤や鉄剤

  • 電解質異常には専用の補正薬

これらを食事療法や点滴療法と組み合わせて行うことで、愛犬の生活の質を維持することができます。薬物療法は獣医師の診断と継続的な検査管理のもとで行うことが何よりも大切です。