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犬の腎臓病の基礎知識

タンパク質の量はなぜ大事?腎臓とタンパクの関係をわかりやすく解説

犬の腎臓病において、食事の中でもっとも議論されるのが 「タンパク質の量」 です。

「タンパク質は減らした方がいい?」
「とにかく低タンパク食が正解?」
「タンパク質を制限すると筋肉が落ちるって聞いたけど大丈夫?」

このような疑問を抱いたまま、食事変更をためらっている飼い主さんも多いはずです。

結論を先に言うと “腎臓病=低タンパクにすればいい”は間違いであり、正しくは“必要な量に調整することが重要” です。

この記事では、腎臓とタンパク質の関係を生理学からわかりやすく説明し、
「なぜタンパク質の量が腎臓病にとって重要なのか」
「減らしすぎ・増やしすぎがどのように危険なのか」
「正しいタンパク質との向き合い方」
を詳しく解説します。


Contents

■ タンパク質は犬にとって“生命の材料”であり必要不可欠

まず大前提として、タンパク質は犬の体にとって非常に重要な栄養素です。

● タンパク質の主な役割

  • 筋肉を維持する

  • 内臓・皮膚・毛づやを作る

  • ホルモンや酵素の材料になる

  • 免疫機能の維持

  • 赤血球など血液細胞を作る

つまり、
タンパク質が不足すると全身の機能が落ちてしまう のです。

腎臓病でもタンパク質は必要です。
ただし “量” と “質” のバランスが非常に重要になります。


■ タンパク質は腎臓に負担をかける?仕組みを解説

ではなぜ腎臓病ではタンパク質量が話題に上がるのでしょうか?

理由は 腎臓の仕事が「タンパク質の代謝産物(老廃物)を処理すること」だから です。

タンパク質を分解すると、

  • アンモニア

  • 尿素(BUN)

  • クレアチニン

といった老廃物ができます。

これらを血液から取り除くのが腎臓の役割です。

腎臓病ではろ過能力が落ちているため…

➤ タンパク質を多く摂る

→ 老廃物が増える
→ 腎臓の負担が増える
→ BUN・Creが上がる
→ 吐き気・食欲不振の原因になる

という流れが起きるのです。


■ では“タンパク質は減らせばいいのか?” → 答えはNO

タンパク質を減らせば老廃物は減りますが、
減らしすぎると筋肉が落ち、逆に腎臓病を悪化させます。

● タンパク質不足で起こる問題

  • 筋肉量の減少(サルコペニア)

  • 食欲の低下

  • 免疫力の低下

  • 貧血の悪化

  • 体の代謝が落ちる

  • 回復力の低下

そして恐ろしいのは…

➤ 筋肉が落ちるとクレアチニン値が“低く見えてしまう”

→ 本当の腎臓の状態が隠れてしまい発見が遅れる

という現象が起きることです。

つまり、
タンパク質を減らしすぎても増やしすぎてもダメ。
“適切な量” が重要。

これが腎臓病とタンパク質の最大のポイントです。


■ 腎臓病では「タンパク質の量」より「質」が極めて重要

腎臓病の療法食が優れている理由は

  • タンパク質の“質が高い”

  • 消化吸収率が良い

  • 老廃物の発生が少ない

という点にあります。

● 高品質なタンパク質とは?

  • アミノ酸バランスが良い

  • 必須アミノ酸をしっかり含む

  • 消化しやすい

  • 老廃物を出しにくい

ロイヤルカナンやヒルズの腎臓サポートでは、
“必要最低限の量で最大の効果を発揮”できるように
タンパク質を調整してあります。


■ ステージによって「タンパク質量」は変わる

腎臓病はステージによって必要なタンパク量が異なります。


● ステージ1(早期)

→ タンパク質の量は“そこまで”制限しない
→ 重要なのは 質(高品質タンパク質)


● ステージ2(中等度)

→ 適度なタンパク制限
→ 療法食への切り替えが有効


● ステージ3〜4(進行~末期)

→ タンパク制限が必要
→ ただし筋肉量を落とさない工夫が必須
→ 食べない場合は“食べることが最優先”


■ タンパク質を減らしすぎると危険な理由【重要】

腎臓病の犬でよく起きるのが
「怖くてタンパク質を与えない」
という過剰な制限です。

減らしすぎは以下の問題を引き起こします。


【1】筋肉が落ちて体力が低下

→ 散歩ができない
→ 寝たきりになりやすい


【2】免疫力が低下

→ 感染症リスクが上がる


【3】皮膚・被毛の状態が悪くなる


【4】食欲不振が悪化する


【5】血液検査のCre値が低く見える

→ 腎臓の悪化に気づけない


腎臓病の犬には、
“タンパク質ゼロ” “低タンパクすぎる食事” は逆効果です。


■ 正しいタンパク質の考え方=「制限」ではなく「最適化」

腎臓病で重要なのは
✔ タンパク質の質
✔ 必要な量だけ与える
✔ ステージに合わせて調整する
✔ 食べない場合は無理に減らさない

という 最適化 です。


■ タンパク質の量を調整するポイント

● 1. 療法食を基本にする

腎臓病食は科学的に最適なタンパク量になっています。


● 2. 手作り食は獣医師と相談が必要

手作りは“やりすぎるとタンパクが多くなりすぎる”危険があります。


● 3. トッピングは慎重に

肉類を足しすぎると老廃物が増加します。
トッピングは極少量に抑えましょう。


● 4. 食べない場合は“食べることが最優先”

腎臓病の犬で最も危険なのは 栄養不足・脱水 です。

食べない → 筋肉減少 → 体力低下 → 腎臓悪化

という負の連鎖が起こるため、
多少タンパク質が増えても食べることを優先するケースがあります。


■ まとめ|タンパク質は“腎臓に悪い”のではなく“調整が必要な栄養素”

タンパク質は犬の体にとって必要不可欠であり、
腎臓病だからといってむやみに減らすべきものではありません。


✔ タンパク質は腎臓に負担をかける

→ 老廃物の処理量が増えるため

✔ しかし減らしすぎると逆に悪化

→ 筋肉量低下・免疫低下・体力低下

✔ 重要なのは量ではなく“質と最適化”

→ 高品質のタンパク質を必要な量だけ

✔ ステージによって必要量は変わる

→ ステージ1〜2は質重視
→ ステージ3〜4は制限+筋肉維持の両立


腎臓病の食事は“バランス”が命です。
不安なときは必ず獣医師や栄養学に詳しい人に相談し、
愛犬にとって最も負担の少ないタンパク質量を見つけていきましょう。