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犬の腎臓病の基礎知識

犬の腎臓病とタンパク尿|放置すると危険?進行のサインを徹底解説

犬の腎臓病では、初期のうちは症状が出にくく、飼い主が異変に気づけないことがよくあります。その中でも「タンパク尿」は、腎臓病の進行や悪化を知らせる非常に重要なサインです。

タンパク尿は、腎臓病の“結果”であると同時に、“悪化の原因”にもなります。この記事では、タンパク尿がなぜ危険なのか、どんな病気が隠れているのか、どう対処すべきなのかをわかりやすく解説します。


タンパク尿は腎臓病悪化の“警告サイン”

タンパク尿は、腎臓病において重要な赤信号のひとつです。

本来、腎臓は「糸球体(しきゅうたい)」という細かいフィルターで血液をろ過し、必要な成分と不要な成分を選別しています。タンパク質は分子が大きいため、正常であればほとんど尿に漏れません。

しかし腎臓が弱ってくると、このフィルターが壊れ、タンパク質が漏れ出します。つまり、

タンパク尿=腎臓のろ過機能が壊れかけている証拠

ということです。

この時点で適切なケアを始めれば病気の進行を遅らせることができますが、放置してしまうと腎臓へのダメージが加速し、腎不全に近づいてしまいます。


タンパク尿とは?正常な腎臓との違いを知る

まずはタンパク尿が何を意味するのか、腎臓の仕組みから整理しましょう。

正常な腎臓ではタンパク質はほぼ漏れない

腎臓の糸球体は、いわば「超精密なフィルター」のようなものです。血液の老廃物や余分な水分を尿として排出しますが、タンパク質のような大きい分子はほぼ通しません。

そのため、健康な犬の尿にはほとんどタンパクは含まれません。

タンパク尿が起きる=フィルターが壊れた状態

糸球体が損傷すると、フィルターの目が粗くなり、タンパク質が尿中に漏れ出します。

これは腎臓病の初期にも起こりますが、特に問題なのは

タンパク尿があることで、さらに腎臓の炎症・損傷が進む

という点です。

つまり、タンパク尿は「結果」でありながら「悪化の原因」にもなるのです。


タンパク尿が危険な理由|悪化の連鎖が始まる

ここからは、タンパク尿が腎臓病をなぜ悪化させるのか、そのメカニズムを詳しく見ていきます。


① タンパク質が尿細管を傷つけ、炎症を引き起こす

尿細管とは、糸球体の後にある管で、尿の濃縮や調整を行う部分です。

タンパク質が漏れると、この尿細管がダメージを受けます。

  • タンパク質は尿細管にとって刺激物

  • 過剰なタンパクは炎症を引き起こす

  • 炎症が繰り返されると、組織が硬くなり回復不能に

結果として、腎臓全体の働きが損なわれていきます。


② 腎臓が線維化(硬くなる)し、回復が難しくなる

尿細管の炎症が長期間続くと、腎臓の組織は「線維化」と呼ばれる状態になります。

線維化とは簡単に言うと、

腎臓がゴムのように硬くなり、元の働きに戻れなくなること

です。

腎臓は一度硬くなると元に戻ることはほぼありません。そのため、タンパク尿を放置すると腎臓病の進行が急速に進みやすくなります。


③ 高血圧や糸球体硬化を招き、さらにタンパク尿が増える悪循環

タンパク尿が悪化すると、腎臓が出すホルモンバランス(RAAS)が狂い、高血圧になりやすくなります。

高血圧は糸球体の血管に強い負担をかけ、さらに損傷を加えます。

  • 糸球体が傷む

  • タンパク尿が増える

  • 炎症が悪化し、腎臓が硬くなる

  • 腎臓が弱り、高血圧が加速

  • また糸球体が傷む

という悪循環が成立してしまうのです。

特に高齢犬や慢性腎臓病の犬では、このループが非常に問題になります。


タンパク尿があるときに疑うべき病気

タンパク尿は「腎臓病だけ」に起こるわけではありません。以下の病気でも見られます。

● 慢性腎臓病(CKD)・糸球体疾患

最も一般的な原因です。特に糸球体腎炎(免疫が関係する病気)は重度のタンパク尿を伴います。

● 急性腎障害(AKI)

脱水、中毒、感染症などが原因で急激に腎機能が低下する状態でもタンパク尿が出ます。

● 高血圧

高血圧が糸球体を傷つけることでタンパク尿が増えます。

● 膀胱炎・尿路感染症

尿所見に白血球・細菌がある場合は、腎臓より下部の炎症が原因の可能性も。

● ホルモン異常(クッシング症候群など)

副腎ホルモンが高いと、タンパク尿が出やすくなります。


検査で見るべき指標|UPC(尿タンパク/クレアチニン比)が最重要

タンパク尿は“量”だけ見ても正確な判断ができません。
そこで使われるのが「UPC(尿タンパク/クレアチニン比)」です。

UPCとは?

尿中のタンパクとクレアチニンの比率を測る検査で、タンパク尿の重症度を客観的に知る指標として非常に重要です。

UPCの基準値(犬の場合)

  • 0.2未満:正常

  • 0.2~0.5:境界域

  • 0.5以上:タンパク尿陽性 → 治療を検討

  • 2.0以上:重度 → 糸球体疾患の可能性が高い

UPCが高いほど腎臓病の進行が早い傾向があります。

タンパク尿だけでは判断できない理由

タンパク尿は、運動後のストレスや一時的な脱水でも増えることがあります。
そのため、以下をセットで確認する必要があります。

  • 尿比重(腎臓の濃縮力)

  • 尿沈査(細菌・白血球)

  • 血液検査(BUN、Cre、SDMA)

  • 血圧

多角的に見ることで、はじめて真の原因がわかります。


タンパク尿があるときの治療・対処法

タンパク尿の治療は「原因によって異なる」ため、まずは診断が最も重要です。

① ACE阻害薬・ARB(タンパク尿の第一選択)

  • ACE阻害薬(エナラプリル、ベナゼプリル)

  • ARB(テルミサルタン)

これらは糸球体内圧を下げ、タンパク尿を減らす効果が証明されています。腎臓病の進行をゆっくりにするためにも非常に重要な薬です。

② 食事療法で腎臓の負担を減らす

  • 低リン

  • 適切なタンパク質量(質重視)

  • オメガ3脂肪酸(炎症を抑える)

腎臓病用の療法食は、タンパク尿改善にも役立ちます。

③ 膀胱炎・尿路感染症の治療

細菌感染が原因の場合は、抗生物質治療が必要です。細菌性膀胱炎は再発しやすいので注意。

④ 血圧の管理

高血圧があるとタンパク尿が悪化するため、血圧測定は必須です。必要に応じて降圧薬が処方されます。

⑤ 炎症反応を抑える治療(場合によって)

糸球体腎炎など免疫異常が関与する場合は、ステロイドや免疫抑制剤を使うこともあります。


家庭でできる観察ポイント

タンパク尿は家庭で目に見えるものではありませんが、次の変化に気づくことが早期発見につながります。

  • 尿の色が濃い・変色している

  • 尿の量が増えた/減った

  • 泡立ち(ただし確実な判断指標にはならない)

  • 水をよく飲むようになった

  • 食欲の低下

  • 体重減少

  • 元気がない

これらは腎臓病の進行とも関係が強いサインです。

異変に気づいたら、早めに動物病院で尿検査を受けることが大切です。


タンパク尿は腎臓病悪化の“危険信号”

タンパク尿は腎臓病の明確なサインであり、放置すると腎機能の低下を加速させる重大な警告です。

✔ タンパク尿はフィルター(糸球体)の損傷サイン
✔ 炎症 → 線維化 → 腎機能低下の連鎖が起きる
✔ 高血圧と組み合わさると悪化が急速
✔ UPC値が治療方針の重要な指標
✔ 早期治療で腎臓の寿命を大きく伸ばせる

腎臓病の犬においてタンパク尿は「見逃してはいけないサイン」です。定期検査と早期対処により、愛犬の腎臓を守り、より長く元気に過ごしてもらうことができます。