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「リンを制限する」とはどういうこと?
腎臓病と診断された犬に対して、よく耳にするのが「リン制限」という言葉。
獣医師から「リンの少ない食事を与えてください」と言われたものの、
「そもそもリンって何?」「なぜ制限が必要なの?」と疑問に思う飼い主さんも多いでしょう。
本記事では、
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リンが犬の体に与える影響
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腎臓病との関係
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適正な数値の目安
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食事・食材での実践方法
を分かりやすく解説します。
そもそも「リン」とは?犬の体に欠かせないミネラル
💡Point
リンは骨や歯の形成、細胞のエネルギー代謝に関わる重要なミネラルです。
犬の体にとってリンは不可欠で、
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骨や歯を作る
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細胞内でエネルギーを生み出す(ATPの構成成分)
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酸とアルカリのバランスを保つ
などの働きを担っています。
つまり「リン=悪いもの」ではありません。
健康な体には必要ですが、腎臓病の犬では状況が変わります。
なぜ腎臓病ではリン制限が必要なのか?
💡Point
腎臓がリンをうまく排出できなくなり、血液中にリンが溜まる=腎臓の負担を悪化させるためです。
1. 腎臓がリンを排出する働きを持っている
健康な腎臓は、体に不要なリンを尿と一緒に排出します。
しかし腎臓病になると、その「ろ過機能(糸球体濾過率)」が低下し、リンが体内に残ってしまいます。
2. リンの蓄積が“悪循環”を生む
リンが血液中に増えると、「副甲状腺ホルモン(PTH)」が過剰に分泌されます。
これにより、
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骨のカルシウムが溶け出す
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血管が硬くなる
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腎臓組織に炎症が起きる
といった悪循環が発生します。
結果として、腎臓病がさらに進行するリスクが高まるのです。
3. 「リン制限=腎臓を守る第一歩」
つまりリン制限は、腎臓の働きをこれ以上悪化させないための基本的ケアです。
薬や治療と同じくらい、食事管理が重要になります。
どのくらいリンを制限すればいい?数値の目安
💡Point
腎臓病の進行度によって異なりますが、
1日あたり 60〜100mg/kg以下(体重あたり) が一般的な目安です。
1. 健康な犬のリン摂取量
通常のドッグフードでは、リン含有量は 約0.8〜1.2% 程度です。
健康な犬にとっては問題ありません。
2. 腎臓病の犬に推奨されるリン量
腎臓病用の療法食(例えばロイヤルカナン、ヒルズ、ドクターズケアなど)では、
リン含有量は 0.2〜0.5%前後 に調整されています。
✅ 目安:
体重5kgの犬 → 1日あたりリン摂取量約200〜300mg
体重10kgの犬 → 約400〜600mg
※必ず獣医師の指示や血液検査結果(血清リン値)をもとに調整してください。
リンが多い食品・少ない食品の比較
💡Point
肉・魚・乳製品・内臓系はリンが多く、野菜や炭水化物は比較的少ない。
| 食品分類 | リンが多い食材(控える) | リンが少ない食材(使いやすい) |
|---|---|---|
| 肉類 | 鶏レバー、豚ハツ、牛肉、ラム肉 | 鶏むね肉(皮なし)、ささみ |
| 魚介類 | いわし、さば、しらす、干物 | 白身魚(タラ、カレイ) |
| 乳製品 | チーズ、牛乳、ヨーグルト | 植物性ミルク(豆乳は少量) |
| 穀類 | オートミール、玄米 | 白米、うどん、じゃがいも |
| 野菜 | ほうれん草、ブロッコリー | キャベツ、人参、大根 |
⚠️注意:加工食品やおやつの多くに「リン酸塩(pH調整剤)」が含まれています。
→ 成分表で“リン酸〜”と書かれているものは避けましょう。
手作り食でリン制限を意識するポイント
💡Point
「低リン+高品質なたんぱく質+水分をしっかり」これが腎臓ケアの黄金バランスです。
1. タンパク質は減らしすぎない
「リン制限=タンパク質制限」と混同しがちですが、別の話です。
タンパク質を減らしすぎると筋肉量が減り、代謝が落ちてしまいます。
良質な低リンタンパク源(例:鶏ささみ、白身魚、豆腐)を使いましょう。
2. 煮汁にリンが溶ける!調理法で減らせる
肉や魚を下ゆですることで、リンを20〜30%減らすことができます。
ゆで汁は使わず、食材を冷ましてから与えると◎。
3. カルシウムとのバランスも大事
リンが多いとカルシウムが不足しがち。
カルシウム:リン=1.2:1 程度が理想とされています。
カルシウム補給には、卵殻パウダーや小松菜などがおすすめ。
療法食を上手に活用するコツ
💡Point
市販の腎臓病用フードは、科学的にリン量が管理されているため、最も安全で確実です。
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代表的な療法食:
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ヒルズ〈k/d〉シリーズ
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ロイヤルカナン〈腎臓サポート〉
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ドクターズケア〈キドニーケア〉
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メリット:リン・ナトリウム・たんぱく質がバランス良く制御
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デメリット:食いつきが悪い場合があるため、少し温める・香りを引き出す工夫を
リン制限は腎臓を守る“食の治療”
リン制限は、腎臓病の進行を遅らせるもっとも重要な食事療法です。
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リンを抑えることで腎臓の負担を軽減
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血管や骨を守り、合併症のリスクを減らす
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手作りでも、療法食でも、バランスと継続が大切
🐾「リンを減らす=命を守るケア」
今日からできる食事の見直しで、愛犬の腎臓を長く守っていきましょう。


