犬の腎盂腎炎(じんうじんえん)は、腎臓の「腎盂(じんう)」と呼ばれる尿の通り道に細菌感染が広がり、腎臓全体に炎症を起こす病気です。急性で発症することもあれば、慢性的に進行して腎不全につながることもあります。放置すると腎臓の働きが著しく低下し、尿毒症に発展する危険があるため、早期発見と治療が重要です。ここでは犬の腎盂腎炎の原因、症状、検査、治療、そして予防とケアについて詳しく解説します。
Contents
腎盂腎炎の原因
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尿路感染症の進行:膀胱炎や尿道炎から細菌が逆流して腎臓へ到達
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尿路結石:結石による尿路閉塞で細菌感染が悪化
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解剖学的異常:尿管の異常や逆流現象(膀胱尿管逆流症)
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免疫力低下:高齢犬、慢性疾患を抱える犬でリスクが高い
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カテーテル使用:排尿障害で長期カテーテルを使用した場合に細菌感染が起こりやすい
腎盂腎炎の症状
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発熱
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激しい元気消失、ぐったりする
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食欲不振、体重減少
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嘔吐や下痢
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多飲多尿または乏尿
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頻尿や排尿時の痛み(膀胱炎を併発することも多い)
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血尿や濁った尿
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慢性化すると慢性腎不全や尿毒症へ移行
検査法
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血液検査
BUN、クレアチニン、SDMAで腎機能を評価
白血球増加や炎症マーカー(CRP)の上昇を確認 -
尿検査
尿比重、尿沈渣、細菌培養で感染の有無を確認 -
画像検査
超音波やX線で腎臓の腫れや尿路結石を確認 -
尿培養・感受性試験
細菌の種類を特定し、有効な抗菌薬を選択
治療法
薬物療法
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抗菌薬(培養検査に基づいて選択し、数週間~数か月継続)
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解熱剤、制吐剤で症状を緩和
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利尿薬で尿の流れを改善(必要に応じて)
点滴療法
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脱水や電解質異常を補正
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尿毒素の排泄を促進
原因療法
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結石や腫瘍がある場合は外科的治療
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解剖学的異常がある場合は外科的矯正
支持療法
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腎臓病用療法食で腎臓の負担を軽減
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必要に応じて皮下輸液を継続
予後について
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急性腎盂腎炎は早期に治療すれば回復可能
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治療が遅れると慢性化し、腎不全に移行するリスクが高い
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再発防止のためには基礎疾患(膀胱炎、結石など)の管理が重要
飼い主ができる予防とケア
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膀胱炎や排尿異常を放置せず早期に治療する
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定期的な尿検査・血液検査で腎臓の健康状態を確認
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水分補給を徹底し、尿の流れをスムーズにする
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尿の色やにおい、排尿の仕方を毎日観察
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結石体質の犬は専用フードで再発予防
飼い主がよく抱く質問
腎盂腎炎は完全に治りますか?
急性の場合は抗菌薬で治ることもありますが、慢性化すると完全な治癒は難しく、腎不全のリスクが残ります。
繰り返しやすい病気ですか?
はい。膀胱炎や結石を抱えている犬では再発しやすいため、定期的な検査と予防が重要です。
自宅でできるケアはありますか?
水分補給、食事管理、尿の観察が基本です。異常を感じたら早めに動物病院を受診してください。
まとめ
犬の腎盂腎炎は尿路感染症や結石をきっかけに発症し、腎臓に深刻なダメージを与える病気です。
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原因は細菌感染、結石、解剖学的異常など
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発熱、血尿、食欲不振、元気消失が典型的な症状
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検査は血液・尿・画像・培養検査を組み合わせて診断
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治療は抗菌薬、点滴、原因療法、療法食で行う
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早期発見と予防が腎不全進行を防ぐカギ
飼い主が日常的に尿や体調の変化を観察し、早めに対応することで愛犬の腎臓を守ることができます。