犬の腎臓病は単独で進行するだけでなく、ホルモンの異常を伴う「副腎の病気」と深い関わりを持つことがあります。副腎は腎臓のすぐ上に位置し、ホルモン分泌を通じて体の水分・電解質・代謝を調整しています。そのため、副腎疾患があると腎臓病が悪化しやすく、逆に腎臓病によって副腎ホルモンのバランスが乱れることもあります。本記事では犬の腎臓病と副腎の病気の関係、合併症、ケアについて詳しく解説します。
Contents
犬の代表的な副腎の病気
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
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副腎から過剰にコルチゾールが分泌される病気
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症状:多飲多尿、食欲亢進、脱毛、皮膚の菲薄化、腹部膨満
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長期間続くと腎臓に負担がかかり、腎不全を進行させる
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
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コルチゾールやアルドステロンが不足する病気
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症状:食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、低ナトリウム血症、高カリウム血症
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腎臓の水分・電解質バランスに影響し、急性腎不全のような症状を起こす
副腎腫瘍
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良性・悪性の腫瘍が発生することがあり、ホルモン分泌異常を引き起こす
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高血圧や腎臓への血流障害につながる場合がある
腎臓病と副腎疾患の関係
副腎の病気が腎臓に与える影響
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クッシング症候群:高血圧や多飲多尿による腎臓の負担増加
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アジソン病:脱水や電解質異常により腎機能が急激に悪化
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副腎腫瘍:血圧上昇やホルモン異常により腎臓病の進行を助長
腎臓病が副腎に与える影響
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腎不全による体液・電解質の乱れが副腎ホルモン分泌に影響
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慢性ストレスによる副腎疲労がホルモンバランスを崩す
合併症のリスク
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高血圧:クッシング症候群や副腎腫瘍により発症
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急性腎不全:アジソン病による電解質異常から誘発
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慢性腎不全の進行:副腎ホルモン異常による代謝異常が関与
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免疫力低下:ホルモン異常により感染症リスクが上昇
管理とケアの方法
薬物療法
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クッシング症候群:トリロスタンなどでコルチゾール分泌を抑制
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アジソン病:副腎皮質ホルモン剤や電解質補正薬を投与
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腎臓病:ACE阻害薬、リン吸着剤、制吐剤などを併用
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複数疾患に配慮した薬剤選択が必要
食事管理
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腎臓病用療法食(低リン・低ナトリウム)を基本に
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クッシング症候群では高脂肪食を避ける
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アジソン病では適切なナトリウム補給が必要になることもある
定期的な検査
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血液検査:BUN、クレアチニン、SDMA(腎機能)、Na/K比(副腎機能)
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超音波検査:副腎腫瘍や腎臓の状態を確認
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血圧測定:高血圧の有無をチェック
生活環境
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ストレスを避け、安定した生活リズムを維持
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水分を十分に与え、脱水を防ぐ
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適度な運動で体力維持
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と副腎疾患、どちらを優先して治療すべきですか?
症状の重さによります。アジソン病による急性症状は命に関わるため優先治療が必要ですが、慢性腎臓病の管理も並行して行います。
クッシング症候群は腎臓病を悪化させますか?
はい。長期的に高血圧や代謝異常を引き起こし、腎不全を進めるリスクがあります。
アジソン病と腎不全の症状は似ていますか?
似ています。どちらも脱水・食欲不振・嘔吐が見られるため、血液検査や電解質検査で鑑別する必要があります。
まとめ
犬の腎臓病と副腎疾患は互いに影響し合い、合併すると症状が複雑化し、治療も難しくなります。
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クッシング症候群は腎臓に負担をかけ、腎不全を進行させる
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アジソン病は急性腎不全に似た症状を起こす
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副腎腫瘍は高血圧や腎機能低下の原因となる
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管理には薬物療法・食事管理・定期検査・生活環境の改善が欠かせない
飼い主が両疾患の関係を理解し、早期発見と適切なケアを行うことで、愛犬の健康寿命を守ることができます。