犬の腎臓病は高齢犬を中心に多くみられる病気ですが、同じくホルモン系のトラブルである「甲状腺機能異常」と併発することがあります。甲状腺は代謝をコントロールする重要な臓器であり、機能が低下または亢進すると全身に影響を与えます。腎臓病と甲状腺疾患が重なると、病気の進行や症状が複雑化し、治療にも注意が必要です。ここでは犬の腎臓病と甲状腺機能異常の関係、合併症、ケアについて詳しく解説します。
Contents
犬の甲状腺機能異常とは
甲状腺機能低下症
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中〜大型犬や高齢犬に多い
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甲状腺ホルモン(T4、T3)が不足することで代謝が低下
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症状:体重増加、寒がり、元気消失、被毛の脱落、皮膚トラブル
甲状腺機能亢進症
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犬ではまれだが発症例あり(猫では多い)
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甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が過剰に亢進
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症状:体重減少、多飲多尿、心拍数増加、落ち着きのなさ
腎臓病と甲状腺機能異常の関係
腎臓病が甲状腺に与える影響
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腎機能低下によりホルモン代謝が乱れる
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慢性腎臓病(CKD)では「低T3症候群」と呼ばれる状態が起こることがある
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代謝が落ちることで体力低下が加速
甲状腺機能異常が腎臓に与える影響
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甲状腺機能低下症 → 代謝が低下し、血流が減少 → 腎臓のろ過機能も低下
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甲状腺機能亢進症 → 高血圧や心拍数増加 → 腎臓の血管に負担がかかる
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両方の異常が合併すると腎臓病の進行が早まる可能性
合併症のリスク
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慢性腎不全の進行
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高血圧(甲状腺機能亢進症と腎臓病の両方で起こりやすい)
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心臓病(甲状腺ホルモンの異常により心臓への負担が増加)
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体重変動(減少または増加)による栄養バランスの乱れ
管理とケアの方法
定期的な検査
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血液検査:T4、TSH(甲状腺ホルモン)、BUN、クレアチニン、SDMA
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血圧測定:高血圧の有無をチェック
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体重測定:増減を記録し、早期に異変を察知
薬物療法
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甲状腺機能低下症:レボチロキシン(甲状腺ホルモン剤)で補充
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甲状腺機能亢進症:抗甲状腺薬や外科的治療(稀)
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腎臓病との併用薬は必ず獣医師の指導で調整
食事管理
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腎臓病用療法食を基本としつつ、甲状腺疾患に悪影響を与えないよう栄養バランスを調整
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適度なたんぱく質と低リン・低ナトリウムを意識
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体重や代謝に応じて給餌量を調整
生活環境
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体力が落ちている場合は安静を重視
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寒がりの場合は保温を工夫
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ストレスの少ない生活リズムを維持
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と甲状腺機能異常は同時に治療できますか?
はい。可能ですが、薬や食事の調整が難しいため、獣医師の慎重な管理が必要です。
甲状腺機能低下症は治りますか?
完治は難しいですが、甲状腺ホルモン剤の投与で症状を大きく改善し、生活の質を維持できます。
腎臓病があると甲状腺の薬は使えませんか?
使えますが、腎臓への影響を考慮し、投与量や検査の頻度を増やす必要があります。
まとめ
犬の腎臓病と甲状腺機能異常は、互いに影響を及ぼし合う疾患です。
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腎臓病はホルモン代謝を乱し、甲状腺機能低下を招くことがある
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甲状腺機能異常は腎臓に負担をかけ、病気の進行を早める
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合併すると高血圧や心臓病などの合併症リスクが増加
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治療は薬物・食事・生活管理を組み合わせ、定期的な検査で調整が必要
飼い主が両疾患の関係を理解し、獣医師と連携して治療方針を立てることで、愛犬の健康寿命を守ることができます。