犬の急性腎不全は、短期間で腎臓の働きが急激に低下する重篤な病気です。慢性腎臓病とは異なり、数時間から数日で症状が悪化するため、発見が遅れると命に関わります。しかし、原因を特定して早期に治療を行えば回復の可能性も高く、迅速な対応が重要です。ここでは犬の急性腎不全の原因、症状、検査、治療法、そして飼い主が日常で注意すべきポイントについて詳しく解説します。
Contents
急性腎不全の原因
-
中毒:ブドウ、レーズン、ユリ、エチレングリコール(不凍液)、一部の薬剤(NSAIDs、抗菌薬など)
-
感染症:レプトスピラ症、細菌性腎盂腎炎
-
尿路閉塞:結石や腫瘍によって尿が流れなくなる
-
循環不全:脱水、出血、ショックによる腎血流の低下
-
外傷:事故や手術による腎臓損傷
急性腎不全の症状
-
急激な食欲不振
-
嘔吐や下痢
-
無尿または乏尿(尿が出ない、極端に少ない)
-
多尿(初期には見られることもある)
-
脱水による皮膚の弾力低下
-
元気消失、ぐったりする
-
口臭(アンモニア臭)
-
発熱または低体温
これらの症状は急速に悪化するため、放置すると尿毒症に至り、数日で命の危険があります。
検査法
-
血液検査
-
BUN、クレアチニン、SDMAの上昇で腎機能を評価
-
高カリウム血症による不整脈リスクを確認
-
-
尿検査
-
尿比重、尿沈渣で腎障害を確認
-
-
画像検査
-
超音波やX線で尿路閉塞や腎臓の異常を把握
-
-
感染症検査
-
レプトスピラなどの感染を疑う場合は血清検査
-
治療法
支持療法
-
静脈点滴で水分と電解質を補正
-
利尿薬で尿量を確保
-
制吐剤で嘔吐を抑える
-
血圧を安定させ腎血流を維持
原因療法
-
感染症 → 抗菌薬
-
中毒 → 解毒剤、胃洗浄、活性炭
-
尿路閉塞 → カテーテル処置や外科手術
特殊療法
-
重症例では血液透析や腹膜透析が必要になることもある
予後について
-
早期に治療を開始すれば回復可能な場合も多い
-
治療が遅れると慢性腎不全へ移行するリスクが高い
-
完全な回復が難しいケースでは、延命と生活の質の維持が中心となる
飼い主ができる予防とケア
-
ブドウ、レーズン、ユリなど腎毒性のある食材を与えない
-
不凍液や薬品の誤飲を防ぐ
-
新鮮な水を常に与え、脱水を予防
-
排尿の回数や尿量の変化を観察する
-
嘔吐や急な元気消失が見られたらすぐに動物病院へ
飼い主がよく抱く質問
急性腎不全は治りますか?
はい。早期に治療を始めれば回復が期待できます。ただし進行が早いため、発見が遅れると命に関わります。
犬でも透析はできますか?
可能です。専門施設では血液透析や腹膜透析が行われていますが、費用や通院の負担を考慮する必要があります。
急性腎不全と慢性腎不全の違いは?
急性は突然発症し、早期治療で回復の可能性があるのに対し、慢性は長期的に進行し回復が困難です。
まとめ
犬の急性腎不全は短期間で進行し、命に直結する非常に危険な病気です。
-
中毒、感染症、尿路閉塞、脱水などが主な原因
-
嘔吐、無尿、食欲不振などの症状が急速に進行
-
治療は点滴や原因療法、場合によっては透析が必要
-
予防には中毒防止と水分管理、排尿観察が欠かせない
飼い主が日々の体調変化を敏感に察知し、早急に対応することが愛犬の命を守る最大のポイントです。