犬の腎臓病は老廃物の排泄や体内バランスの維持に関わる重要な疾患であり、進行すると全身に影響を及ぼします。その中で見逃せないのが「生殖器疾患」との関係です。生殖器系の病気は泌尿器と隣接しており、腎臓に直接的・間接的に負担をかけることがあります。また、ホルモンの異常や感染症を介して腎臓病と関連するケースもあります。ここでは犬の腎臓病と生殖器疾患の関係、合併症、そしてケアについて詳しく解説します。
Contents
腎臓病と関連する代表的な生殖器疾患
雄犬の場合
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前立腺肥大
ホルモンバランスの変化で前立腺が腫大し、尿路を圧迫 → 尿閉や膀胱炎を介して腎臓に負担 -
前立腺炎
細菌感染による炎症が尿路を通じて腎盂腎炎を引き起こす可能性
雌犬の場合
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子宮蓄膿症
子宮内に膿がたまり、全身感染や腎不全の原因となる -
卵巣腫瘍や子宮腫瘍
腫瘍の圧迫により尿路の閉塞や腎機能の低下を招く
共通
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性ホルモンの異常
ホルモンの過剰・不足が腎臓や泌尿器に二次的な影響を及ぼす
生殖器疾患が腎臓に与える影響
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尿路閉塞 → 尿が逆流し、水腎症や急性腎不全を引き起こす
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細菌感染 → 子宮蓄膿症や前立腺炎が腎盂腎炎の原因になる
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ホルモン異常 → 高血圧や代謝異常を介して腎臓病を悪化させる
腎臓病が生殖器に与える影響
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免疫力低下で生殖器感染症(膣炎・前立腺炎)が悪化しやすい
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ホルモン代謝の異常により生殖機能が低下
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腎不全に伴う全身衰弱で繁殖能力に影響
合併症のリスク
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子宮蓄膿症に伴う急性腎不全
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前立腺肥大・炎症による尿閉と腎盂腎炎
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腫瘍性疾患による尿路閉塞や腎臓圧迫
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全身感染による敗血症と腎不全
合併症の症状
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頻尿、排尿困難、血尿
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嘔吐や下痢、食欲不振
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発熱、倦怠感、元気消失
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腹部膨満(子宮蓄膿症や前立腺肥大)
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異常なおりものや尿臭の悪化
管理とケアの方法
食事管理
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腎臓病用療法食を基本とし、低リン・低ナトリウム・高消化性たんぱく質を確保
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生殖器腫瘍や感染がある場合は体力維持のため高エネルギー食を工夫
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水分を十分に摂取させ、排尿を促す
薬物療法
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腎臓病:ACE阻害薬、降圧薬、リン吸着剤、制吐剤など
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生殖器疾患:抗菌薬(感染症)、ホルモン治療(前立腺疾患)
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重症例では外科手術(避妊手術、前立腺手術、腫瘍切除)が検討される
水分補給
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常に清潔で新鮮な水を用意
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脱水リスクが高い場合は皮下輸液で補助
定期的な検査
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血液検査:BUN、クレアチニン、SDMA
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尿検査:尿比重、感染の有無、結晶の確認
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画像検査:エコーで子宮・卵巣・前立腺の状態を把握
生活環境
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排尿しやすい環境を整える
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発情期のストレスを避ける(未避妊・未去勢の場合)
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清潔な寝床で感染を予防
飼い主がよく抱く質問
腎臓病の犬でも避妊・去勢手術はできますか?
腎機能の状態によりますが、命に関わる子宮蓄膿症や前立腺疾患が疑われる場合は手術が推奨されることもあります。必ず獣医師とリスクを相談してください。
子宮蓄膿症は腎臓病を悪化させますか?
はい。細菌感染や毒素が腎臓に影響し、急性腎不全を起こす危険があります。早期の外科治療が必要です。
生殖器疾患を予防できますか?
避妊・去勢手術は子宮蓄膿症や前立腺肥大の予防に有効です。腎臓病の犬では時期や方法を慎重に判断する必要があります。
まとめ
犬の腎臓病と生殖器疾患は互いに影響し合い、併発すると腎不全や尿路障害など深刻な合併症を引き起こします。
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子宮蓄膿症や前立腺疾患は腎臓病を急速に悪化させる要因
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腎臓病による免疫低下や代謝異常が生殖器疾患を助長する
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管理は食事療法・薬物療法・水分補給・定期検査を組み合わせ、必要に応じて外科治療を検討
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飼い主の観察と早期対応が、愛犬の命を守るカギ