犬の腎臓病は、血液をろ過して老廃物を排泄する機能が低下する病気ですが、同じ泌尿器系に属する膀胱や尿管、尿道の病気と密接な関係を持っています。泌尿器疾患は腎臓に直接的な影響を与えることが多く、逆に腎臓病の進行が泌尿器全体に負担をかけるケースもあります。ここでは犬の腎臓病と泌尿器疾患の関係、合併症のリスク、そしてケア方法について詳しく解説します。
Contents
腎臓病と泌尿器疾患の関係
泌尿器疾患が腎臓に与える影響
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尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎):感染が腎臓に広がると腎不全の原因になる
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尿路結石症:結石による尿路閉塞が尿の流れを妨げ、腎盂拡張や腎障害を引き起こす
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前立腺肥大や腫瘍:尿路の圧迫によって排尿障害が起こり、腎臓に逆流性の負担を与える
腎臓病が泌尿器に与える影響
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尿量異常:腎機能低下で多尿や乏尿が起こり、膀胱の働きに影響する
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免疫力低下:尿路感染症にかかりやすくなる
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尿毒素の蓄積:膀胱や尿路の炎症を悪化させる可能性
腎臓病と関連する代表的な泌尿器疾患
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膀胱炎:頻尿、血尿、排尿時の痛み
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腎盂腎炎:腎臓に炎症が及ぶと発熱や食欲不振、全身の倦怠感が見られる
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尿路結石症(腎結石・膀胱結石):排尿困難、血尿、急性腎不全のリスク
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前立腺疾患(雄犬):尿閉や血尿の原因となり、腎臓病の悪化につながる
合併症のリスク
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急性腎不全(尿路閉塞や腎盂腎炎によって発症)
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慢性腎不全の進行(感染や炎症の繰り返し)
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尿毒症(老廃物の蓄積による全身中毒症状)
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膀胱結石による再発性膀胱炎
合併症の症状
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頻尿や排尿困難
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血尿や濁った尿
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強い口渇、多飲多尿
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嘔吐や下痢、食欲不振
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発熱や元気消失
管理とケアの方法
食事管理
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腎臓病用療法食(低リン・低ナトリウム・高消化性たんぱく質)を基本に
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結石体質の犬には、ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石に対応したフードを選択
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水分を多く摂らせ、尿を希釈して感染や結石のリスクを減らす
薬物療法
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腎臓病:降圧薬、リン吸着剤、制吐剤など
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泌尿器疾患:抗菌薬(膀胱炎・腎盂腎炎)、鎮痛薬、結石溶解食や薬剤
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状況によりカテーテル処置や外科手術が必要な場合もある
水分補給
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常に新鮮な水を用意し、水分摂取を促す
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ウェットフードやスープ状のごはんを活用する
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脱水リスクが高い場合は皮下輸液を実施
定期的な検査
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血液検査:BUN、クレアチニン、SDMA
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尿検査:尿比重、pH、細菌の有無、結晶の確認
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画像検査:超音波やX線で結石や腫瘍をチェック
生活環境
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トイレ環境を清潔に保ち、排尿を促す
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寒さやストレスを避け、排尿リズムを乱さない
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定期的に排尿の回数や尿の色を観察
飼い主がよく抱く質問
腎臓病の犬は膀胱炎になりやすいですか?
はい。免疫力の低下や多飲多尿の影響で膀胱炎を繰り返しやすくなります。
尿路結石と腎臓病は関係がありますか?
はい。結石による尿路閉塞は急性腎不全の原因になり、慢性腎臓病を悪化させる要因にもなります。
水をたくさん飲ませても大丈夫ですか?
はい。腎臓病と泌尿器疾患のどちらにとっても、水分補給はとても重要です。ただし心不全など他の病気がある場合は獣医師と相談してください。
まとめ
犬の腎臓病と泌尿器疾患は互いに強い関わりを持ち、併発すると腎不全や尿毒症など深刻な合併症を引き起こします。
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膀胱炎や腎盂腎炎は腎臓に炎症を波及させる
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尿路結石や前立腺疾患は腎臓に逆流性の負担をかける
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腎臓病は尿量異常や免疫力低下を通じて泌尿器疾患を悪化させる
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管理は食事療法・薬物療法・水分補給・定期検査の総合的アプローチが重要
飼い主が排尿の変化に注意し、早期に対応することで愛犬の腎臓と泌尿器の健康を守ることができます。