犬の腎臓病は慢性的に進行することが多く、他の臓器疾患を合併しやすい病気です。その中でも特に注意すべきなのが「内分泌疾患」との関係です。内分泌疾患とはホルモンの分泌異常によって起こる病気であり、腎臓の機能や代謝と密接に関わっています。ここでは犬の腎臓病と内分泌疾患の関係、合併症のリスク、そしてケアについて詳しく解説します。
Contents
犬に多い内分泌疾患と腎臓病の関係
糖尿病
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インスリン不足や作用不良により高血糖が続く
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高血糖が腎臓の糸球体を傷つけ、「糖尿病性腎症」を引き起こす
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腎臓病が進行するとインスリン代謝が乱れ、低血糖リスクが増加
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
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コルチゾール過剰により高血圧・多飲多尿を引き起こす
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腎臓に負担をかけ、慢性腎臓病を悪化させる
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
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ホルモン不足により低ナトリウム血症・高カリウム血症を引き起こす
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脱水や循環不全が腎臓病を進行させる
甲状腺機能低下症
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代謝が低下し、腎臓の血流が減少
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腎機能の低下を進める要因となる
腎臓病が内分泌に与える影響
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腎機能低下によりホルモンの代謝や排泄が乱れる
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インスリン作用の変動により血糖コントロールが難しくなる
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高血圧や電解質異常がホルモンバランスに影響する
合併症のリスク
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糖尿病性腎症による慢性腎不全
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高血圧(クッシング症候群や腎臓病双方でリスク増大)
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電解質異常(アジソン病や腎不全で悪化)
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低代謝による免疫力低下(甲状腺機能低下症+腎臓病)
管理とケアの方法
薬物療法
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糖尿病:インスリン投与
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クッシング症候群:副腎抑制薬(トリロスタンなど)
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アジソン病:副腎ホルモン補充
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腎臓病:ACE阻害薬、リン吸着剤、制吐剤など
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併発している場合は薬の相互作用や腎排泄性を考慮し調整が必要
食事管理
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腎臓病:低リン・低ナトリウム・高消化性たんぱく質
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糖尿病:血糖値を安定させる低GI設計
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両方に対応した療法食や、個別に調整した栄養管理が必須
水分補給
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常に新鮮な水を与え、脱水を防ぐ
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多飲多尿が見られる場合は電解質バランスに注意
定期的な検査
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腎機能:BUN、クレアチニン、SDMA
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内分泌:血糖値、フルクトサミン、コルチゾール、電解質、甲状腺ホルモン
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血圧測定や尿検査も欠かさず実施
生活環境
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適度な運動で体重を管理
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ストレスを減らし、ホルモンバランスの乱れを防ぐ
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安静と活動のバランスを保つ
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と内分泌疾患を同時に治療できますか?
はい。可能ですが、食事や薬の選択肢が制限されるため、必ず獣医師と相談して治療計画を立てる必要があります。
インスリン治療は腎臓に影響しますか?
直接的な負担はありませんが、腎機能低下によってインスリン作用時間が変わるため、投与量の調整が重要です。
クッシング症候群やアジソン病と腎臓病、どちらを優先すべきですか?
命に直結する急性症状(ショックや電解質異常など)がある場合は副腎疾患を優先し、腎臓病の管理は並行して行います。
まとめ
犬の腎臓病と内分泌疾患は互いに影響を与え合い、併発すると病態が複雑化します。
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糖尿病、クッシング症候群、アジソン病、甲状腺機能低下症はいずれも腎臓病を悪化させる要因となる
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腎臓病はホルモン代謝を乱し、内分泌疾患のコントロールを難しくする
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管理には薬物療法、食事療法、水分補給、定期検査の総合的アプローチが必要
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飼い主が両疾患の関係を理解し、早期発見とケアを行うことが健康寿命を延ばすカギ