犬の腎臓病は高齢犬に多くみられる慢性疾患ですが、他の臓器疾患と合併することも少なくありません。その中でも「膵臓病」との関係は特に重要です。膵臓は消化酵素を分泌する外分泌機能と、インスリンなどのホルモンを分泌する内分泌機能を持つ臓器であり、腎臓と代謝や消化の面で密接に関わっています。腎臓病と膵臓病を併発すると症状が重複し、治療や管理が複雑になります。ここでは、犬の腎臓病と膵臓病の関係、合併症、ケアについて詳しく解説します。
Contents
犬の膵臓病とは
急性膵炎
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膵臓が急性の炎症を起こす病気
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症状:激しい嘔吐、下痢、腹痛、発熱、ぐったりする
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命に関わることもある重篤な疾患
慢性膵炎
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急性膵炎を繰り返したり、長期間続く炎症
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消化吸収不良や慢性的な嘔吐・下痢を伴う
膵外分泌不全
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消化酵素が不足し、栄養吸収ができなくなる
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症状:体重減少、脂肪便、食欲旺盛だが痩せていく
膵腫瘍(膵がん、インスリノーマなど)
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稀だが悪性腫瘍は進行が早く、腎臓病と併発すると予後が厳しい
腎臓病と膵臓病の関係
膵臓病が腎臓に与える影響
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急性膵炎の炎症によるショックや脱水で急性腎不全を起こす
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膵臓腫瘍やホルモン異常(インスリノーマなど)による代謝異常が腎臓を悪化させる
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栄養吸収不良が続くと腎臓の修復力が低下
腎臓病が膵臓に与える影響
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尿毒素の蓄積が膵臓の炎症を悪化させる
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食欲不振や代謝異常が膵臓の負担を増す
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薬物療法(利尿薬や降圧薬)の影響で膵臓に負担がかかる場合もある
合併症のリスク
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急性腎不全:膵炎による脱水・ショックが原因
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低血糖・高血糖:インスリン分泌異常で糖代謝が乱れる
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消化不良と栄養失調:膵外分泌不全により体力が低下し、腎臓病が悪化
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多臓器不全:膵炎と腎不全が同時進行すると全身の臓器に影響
管理とケアの方法
食事管理
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腎臓病:低リン・適度なたんぱく質・低ナトリウム設計
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膵臓病:低脂肪食、消化の良い食事
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両方に対応できる療法食を獣医師と相談して選ぶ
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少量を複数回に分けて与えることで消化吸収を助ける
薬物療法
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腎臓病:降圧薬、リン吸着剤、制吐剤、点滴治療
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膵臓病:制吐剤、消化酵素補充、鎮痛薬、膵炎時の入院管理
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両方を併発した場合、薬剤選択は特に慎重に行う必要あり
水分補給
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脱水は腎臓と膵臓どちらにも悪影響を及ぼす
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十分な水分摂取を確保し、必要に応じて皮下輸液を実施
定期的な検査
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腎機能:BUN、クレアチニン、SDMA
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膵機能:cPL(犬膵特異的リパーゼ)、血糖値
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画像検査(超音波)で腎臓と膵臓の状態を確認
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と膵臓病を同時に治療できますか?
はい。可能ですが、食事や薬の選択肢が限られるため、獣医師と相談しながら治療方針を決める必要があります。
膵炎を起こすと腎不全になりやすいですか?
はい。膵炎は強い炎症や脱水を伴うため、急性腎不全を併発するリスクがあります。
食事は手作りでも大丈夫ですか?
可能ですが、腎臓と膵臓の両方に配慮した栄養バランスを保つのは難しいため、必ず獣医師や栄養士に相談してください。
まとめ
犬の腎臓病と膵臓病は密接に関わり合い、併発すると症状が重複し、治療が複雑になります。
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膵炎や膵臓腫瘍は腎臓に悪影響を与え、急性腎不全を招くこともある
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腎臓病は膵臓の炎症や代謝異常を悪化させる
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合併症として急性腎不全、糖代謝異常、栄養失調が起こりやすい
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管理は食事・薬物療法・水分補給・定期検査を組み合わせることが重要
飼い主が腎臓と膵臓の関係を理解し、日々のケアと定期検診を行うことで、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。