犬において「腎臓病」と「糖尿病」は、ともに高齢期に多く発症する代表的な慢性疾患です。どちらも生活の質(QOL)に大きな影響を与えるだけでなく、合併することで病状が悪化するリスクが高まります。腎臓と膵臓・代謝機能は密接に関わっており、糖尿病を持つ犬は腎臓病を発症しやすく、腎臓病がある犬は糖代謝異常を起こしやすいとされています。本記事では、犬の腎臓病と糖尿病の関係、合併症、ケアの方法について詳しく解説します。
Contents
腎臓病と糖尿病の関係
糖尿病が腎臓に与える影響
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高血糖が続くことで腎臓の糸球体に負担をかける
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血管障害によって腎臓のろ過機能が低下する
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「糖尿病性腎症」と呼ばれる状態に進行する可能性がある
腎臓病が糖代謝に与える影響
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腎臓の機能低下でインスリンの分解が遅れ、低血糖のリスクが高まる
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食欲不振や体重減少によりインスリンの投与量調整が難しくなる
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尿毒症により糖代謝全体が乱れる
合併症のリスク
腎臓病と糖尿病を併発すると、以下のような合併症リスクが高まります。
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高血圧:腎臓・血管・心臓にさらなる負担をかける
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感染症:免疫力低下により尿路感染症や皮膚感染症にかかりやすい
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糖尿病性ケトアシドーシス:重度の代謝異常により命に関わる緊急状態
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慢性腎不全の進行:糖尿病性腎症が悪化し、透析や点滴が必要になる場合も
腎臓病と糖尿病の症状の重なり
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多飲多尿
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食欲不振
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体重減少
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嘔吐や下痢
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倦怠感、元気消失
両方の病気に共通する症状が多く、見分けにくい点が特徴です。そのため定期的な血液・尿検査が欠かせません。
管理とケアの方法
食事管理
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腎臓病:低リン・適度なたんぱく質・低ナトリウム設計
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糖尿病:食物繊維を含み、血糖値の急上昇を防ぐフード
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両方に配慮した療法食を選ぶ、または獣医師の指導のもと調整する
薬物療法
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インスリン投与:糖尿病管理の基本
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降圧薬・利尿薬:腎臓病や高血圧に対応
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投薬内容は腎機能を考慮して調整する必要あり
水分補給
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十分な水分摂取で腎臓の負担を軽減
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ウェットフードや皮下輸液を併用する場合もある
定期的な検査
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血糖値・フルクトサミン値で糖尿病管理を確認
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BUN、クレアチニン、SDMAで腎機能を把握
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血圧測定や尿検査も定期的に実施
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と糖尿病を同時に治療できますか?
はい。可能ですが、食事や薬の選択肢が制限されるため、獣医師の管理のもとで慎重に行う必要があります。
インスリン治療は腎臓に負担をかけますか?
直接的な負担はありませんが、腎機能が低下するとインスリンの作用時間が変化するため、用量調整が重要です。
どんな食事がいいですか?
腎臓と糖尿病の両方に対応した療法食、もしくは獣医師の栄養指導を受けた手作り食が適しています。
まとめ
犬の腎臓病と糖尿病は高齢犬に多い疾患であり、互いに悪影響を与え合う関係にあります。
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糖尿病は腎臓に負担をかけ、「糖尿病性腎症」を引き起こす
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腎臓病はインスリン作用や糖代謝に影響を与える
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合併すると高血圧・感染症・ケトアシドーシスのリスクが高まる
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管理には食事・インスリン治療・水分補給・定期検査が不可欠
飼い主が両疾患の関係を理解し、獣医師と連携して治療・ケアを行うことで、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。