犬の腎臓病は単独で進行するだけでなく、他の臓器疾患を併発することがあります。その中でも「肝臓病」との関係は重要です。腎臓と肝臓はどちらも老廃物の解毒・代謝に関わる臓器であり、片方に障害が起こるともう一方に負担をかける「肝腎症候群」と呼ばれる状態になることがあります。ここでは犬の腎臓病と肝臓病の関係、合併症、ケアの方法について詳しく解説します。
Contents
腎臓と肝臓の役割
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腎臓:血液をろ過して老廃物を尿として排泄、水分・電解質バランスを調整
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肝臓:栄養素の代謝、毒素の解毒、胆汁の生成、血液凝固因子の合成
腎臓と肝臓は互いに補完し合う臓器であり、一方が障害を受けるともう一方に負担がかかりやすい仕組みになっています。
腎臓病が肝臓に与える影響
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尿毒素の蓄積が肝臓の代謝に負担をかける
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貧血や栄養不良により肝機能が低下する
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投薬(降圧薬、利尿薬など)の副作用が肝臓に影響を及ぼすことがある
肝臓病が腎臓に与える影響
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肝硬変や重度の肝障害が進むと「肝腎症候群」を引き起こす
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血流の異常により腎臓への血流が不足し、急性腎不全を発症
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肝臓の解毒機能が低下すると体内に毒素が残り、腎臓にさらなる負担がかかる
犬に多い腎臓病と肝臓病の合併症
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肝腎症候群:肝臓病に続発して腎不全が起こる状態
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尿毒症+肝不全:双方の臓器が解毒できず、重度の中毒症状を起こす
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栄養失調:食欲不振により必要な栄養が取れず、肝腎ともに悪化
合併症の症状
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強い食欲不振
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黄疸(歯茎や白目が黄色くなる)
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嘔吐や下痢
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体重減少、筋肉量低下
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腹水(お腹に水がたまる)
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倦怠感、元気消失
管理とケアの方法
食事管理
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腎臓病用療法食を基本としつつ、肝臓への負担も考慮
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低リン・適度なたんぱく質・ナトリウム制限を意識
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消化吸収の良いフードを選び、少量でも栄養を確保
薬物療法
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腎臓病:降圧薬、利尿薬、制吐剤、リン吸着剤
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肝臓病:肝保護剤(ウルソデオキシコール酸、サプリメントなど)
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投薬は腎機能と肝機能の両方を考慮し、獣医師がバランスを調整
水分補給
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脱水を防ぎ、腎臓への血流を維持するために十分な水分を与える
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必要に応じて皮下輸液を継続
定期検査
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血液検査:BUN、クレアチニン、SDMA(腎機能)、ALT、AST、ALP、総ビリルビン(肝機能)
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画像検査で肝臓や腎臓の形態異常を確認
飼い主がよく抱く質問
腎臓病と肝臓病は同時に治療できますか?
はい。ただし、薬や食事の選択が制限されるため、両方に配慮した治療計画が必要です。
肝腎症候群は治せますか?
根本的な治療は難しいですが、点滴や薬で症状を緩和し、延命や生活の質を保つことが可能です。
サプリメントは有効ですか?
ミルクシスル(シリマリン)などの肝保護サプリやオメガ3脂肪酸などは補助的に有効ですが、必ず獣医師の指導に従って使用してください。
まとめ
犬の腎臓病と肝臓病は互いに深く関係し合い、合併症として「肝腎症候群」を引き起こすことがあります。
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腎臓病は肝臓に負担をかけ、肝臓病も腎臓の悪化を招く
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合併症では食欲不振、黄疸、腹水などが見られる
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治療は食事管理、薬物療法、水分補給、定期検査の組み合わせが基本
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飼い主の観察と早期対応が愛犬の健康寿命を延ばすカギ
腎臓と肝臓を同時にケアすることで、愛犬が穏やかに過ごせる時間を長く守ることができます。